お洗濯をしっかりしているのに、なぜか衣類からニオイがする。
そんな経験はありませんか?
実はその原因、「抗菌」効果のある洗剤を使っているだけでは解決しません。
抗菌と消臭はまったく別の作業だからです。
市販の洗濯洗剤の多くは「抗菌」をうたっていますが、「消臭」と明記した商品はごくわずかしかありません。
なぜそうなっているのか、そして衣類のニオイ物質を本当に消すにはどうすればよいのか、消臭の専門家の視点からお伝えします。

衣類の「蓄積臭」はなぜ消えないのか
普通に洗濯をしているつもりでも、衣類にニオイが残ってしまうことがあります。
まずは、その正体から見ていきましょう。
原因となるニオイ物質は数百種類ある
衣類のニオイが「どんな洗剤を使っても落ちない」という相談は少なくありません。
それもそのはずで、ニオイ物質は何百種類もあり、ひとつのアプローチがすべてのニオイ物質に効くわけではないからです。
ニオイ物質はその特性ごとに20数種類のカテゴリーに分けられ、それぞれに合ったアプローチ方法を組み合わせていく必要があります。
「これ一本で何でも消臭」とうたう洗剤もありますが、原理的に、たった一つの成分であらゆるニオイ物質に対応するのは簡単なことではありません。
蓄積臭とは何か
汗や皮脂に含まれるニオイ物質が、洗濯のたびに少しずつ衣類に蓄積していく。
これが「蓄積臭」です。
環境温度や体温が上がると、体がニオう前に、この蓄積臭が衣類から立ちのぼってきます。
くわしくは、「体臭の意外な原因は服にあった?「蓄積臭」の対策とは」でも解説しています。
体臭が気になる方にとって、蓄積臭をしっかり除去できる洗剤を選ぶことは、体臭対策の大切な一歩になります。
「抗菌」表示の洗剤が多いのはなぜか
ドラッグストアの洗剤売り場を見ると、「抗菌」という言葉はよく目にしますが、「消臭」という言葉はあまり見かけません。
この偏りには理由があります。
「消臭」をうたう洗剤は実はわずか
洗剤のパッケージには「50倍抗菌」「部屋干し専用」といったサブタイトルがよく付いています。
しかし、その中で「消臭」という言葉をはっきり使っている商品は、大手3社の合計でもわずか0.5%ほどしかありません(2019年時点のデータ)。
上位には「抗菌・抗ウイルス対応」や「部屋干し用」といった表示が並んでいます。
「抗菌すれば部屋干し臭を防げる」という印象を持たせたいのかもしれませんが、だとしても、消臭をはっきりうたう商品が少なすぎるとは思いませんか。
抗菌は安価につくれる
洗剤に使われる抗菌剤には、塩化ベンザルコニウムなどの4級アンモニウムという成分がよく使われます。
これは洗剤全体の0.1%程度を配合するだけで抗菌効果が見られるため、比較的低コストで「抗菌」をうたえるという事情があります。
皮膚への刺激を考慮して、4級アンモニウムの代わりにフェノキシエタノールを使う洗剤もありますが、こちらも0.5%前後の配合が必要になりコストは上がります。
殺菌・抗菌と消臭は別の工程
「菌がいなければニオイもない」というのは、半分正解で半分間違いです。
ここを整理しておきましょう。
菌ではなく「ニオイ物質」自体がクサイ
菌そのものがニオうわけではなく、ニオイ物質そのものがクサいのです。
抗菌洗剤を使えば菌がいない状態は作れますが、もともとそこにニオイ物質があれば、衣類はクサいままです。
ニオイ物質を取り除く、あるいはニオイのない物質に変える「消臭」という工程が、別途必要になります。
4級アンモニウムは菌を殺すが、ニオイ物質は分解しない
4級アンモニウムは多くの細菌に対して効果がありますが、ニオイ物質そのものを分解する働きはありません。
つまり「抗菌」と「消臭」は、使う成分も、必要な工程もまったく別物なのです。
「抗菌しておけば消臭にもなる」というイメージが先行していますが、消臭の専門家の立場からは、この2つを一緒にしてはいけないとお伝えしたいところです。
ニオイ物質を根本から消すには
では、衣類に蓄積したニオイ物質を本当に消すには、どんな方法があるのでしょうか。
次亜塩素酸は強力だが衣類には使えない
ニオイ物質に幅広く効果があるものとして、次亜塩素酸があります。
食器用の漂白剤などに使われる成分で、ニオイを発する化合物の骨格そのものを変化させる効果があります。
ウンチのニオイの元であるスカトールやインドールのような物質も、次亜塩素酸であれば別の物質に変えられます。
ただし、塩素のニオイが衣類に付いてしまい、ほとんどの色柄を分解してしまうため、普段のお洗濯には使えません。
イオン交換型消臭という選択肢
衣類のニオイをしっかり取るには、何度も洗ってニオイ物質を洗い流すか、イオン交換型の化学的な消臭方法を使うしかありません。
イオン交換型消臭は、ニオイ物質の一部分に何かを付け足したり、その一部分を奪ったりして、ニオイのない別の物質に変える方法です。
ただし、原料のコストが高いうえ、ニオイ物質ごとにpH特性を考慮する必要があり、効果を出すには高い技術と何度もの検証が欠かせません。
当社がこの成分を「ベネフィットーイオン」と呼んでいるのも、「イオンのおかげ」という意味を込めてのことです。
安価に仕上げながら、この効果まで持たせるのは簡単ではないのです。
衣類の蓄積臭が気になる方は、繊維の奥のニオイ汚れまでしっかり洗い落とせる洗剤を選ぶことも、対策のひとつです。
まとめ:「抗菌」と「消臭」は別物
「抗菌」と「消臭」は、似ているようでまったく別の工程です。
抗菌洗剤で菌を減らすことはできても、衣類にすでに蓄積したニオイ物質そのものは残ったままになることがあります。
衣類のニオイが気になる場合は、「抗菌」の表示だけでなく、ニオイ物質そのものにアプローチできる洗剤かどうかも意識してみてください。
自分の衣類にどれくらいの蓄積臭があるのか気になる方は、専門家への相談も選択肢のひとつとして覚えておいてください。

