前回は体臭の基礎になるニオイ物質が5つのグループに分けることが出来る、というお話でした。そのグループは以下の
- カルボン酸類
- アルデヒド類
- アンモニア
- アンモニア以外の窒素系化合物
- 硫黄系化合物
になり、アンモニアを別にして、それぞれが4~5のサブグループに分かれる、という事もお話ししました。実のところ、カルボン酸やアルデヒド類はもっと細かく分かれてきます。そしてアンモニアはサブグループが無い。
なかなか一緒くたに説明できないのですが、大まかに言って20程度のサブグループがある、と話した方が正解かも知れませんね。その20程度のグループの中に含まれるニオイ物質は300を超えます。
その中には、閾値が非常に低いゆえに、僅かなボリュームであるにも関わらず体臭印象に多大な影響を与えるものもあります。それら個別のニオイ物質については追い追いお話ししていきますが、まずは基礎知識の続き。5大グループについての詳細をご教示致します。
カルボン酸は酸素と水素と炭素だけで出来ている。
誰でも知っているカルボン酸と言えば、酢酸。酸っぱい体臭の原因です。酢酸の他に乳酸やギ酸なども体臭に関連があります。ここまでは水に溶けやすくて、汗に含まれる物質。汗をかきやすい若い世代の人が酸っぱいのは、これらが原因。
酸っぱい体臭は炭素数の少ない酢酸等が原因
水溶性か難水溶性かは、分子骨格に含まれる炭素の数によって決まります。上記3つの次に炭素数が少ないのはプロピオン酸。これは酸っぱいのだけれども、どこか雑巾的なニオイにも感じる。それも牛乳を拭いた雑巾のようなニオイ。これも結構水に溶けますので、汗と共に出てきます。男子高校の部室のニオイっていうイメージかも知れません。あと、ワキガ臭の構成臭になっているときもあります。
えぐいニオイのグループは炭素数が4~7辺りまで
もう少し炭素数が増えてくると酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸と言って、かなりエグイニオイになってきます。ちなみにどれも閾値が低くて、少しの分量で激しく臭います。
酪酸は牛小屋のようなニオイというか、いわゆる獣臭の原因。ワキガ臭の構成臭にもなりますし、吉草酸、イソ吉草酸は納豆のようなニオイ。これは足のニオイでよく見られますが、体から発露してくる場合もあります。カプロン酸もいわゆる獣臭的なのですが、なんとなく銀杏の実のニオイにも似ています。これらはかなり強くて印象的で、発露している場合は忌避度が高いです。
それでも、これらは乳酸や酢酸などの、もう少し簡単な組成の物質が体の表面にある時、表皮雑菌の関与で作られる場合があります。体の中で出来る、という事も無いわけではないでしょうが、多分、雑菌関与で作られるケースの方が多いと思います。
殺菌できればニオイが無くなる、わけではない!
余談になりますが、体の中で作られる場合と、体表で何らかの作用があって作られる場合とでは、生成工程が違うわけですが、どういう過程でそのニオイ物質が発生したかを予想することは重要な事です。
なぜかというと、改善へのアプローチが違ってくるから。例えば、主に体の中で作られると思える物質が体臭印象を決めていて、それが悪いタイプのニオイだった場合、体表に対して一生懸命ケアしても、例えば殺菌効果のあるクリーム等を使ってみても、改善は見られません。何故なら殺菌効果があるクリームも、そこにあるニオイ物質には何の効果も及ぼさないからです。つまり、雑菌関与の体臭にのみ、殺菌と言うアプローチが効果を発揮する、という事です。
炭素数が多くなると油っぽいニオイになる
少し横道に逸れすぎてしまいました。カプロン酸より更に炭素数が多いカルボン酸や長鎖脂肪酸(カルボン酸と同じく炭素と酸素と水素で出来ているが、カルボン酸とは分けられていない脂肪酸の仲間のこと。本当は脂肪酸の中にカルボン酸が含まれていると言った方が正解ですが)は、ほとんど水に溶けません。
カプリル酸はやや動物臭掛かっていますが、その先はほとんど鉱物油のようなニオイになってきます。鉱物油系のニオイのグループが他にもあり、アルカン類等なのですが、これらは炭素と水素だけで出来ていて、ニオイは似ていても組成は違います。けれども鉱物油系のニオイ物質はなぜか同じようなアプローチで消臭できますので私は一緒に考えています。
このように同じカルボン酸の仲間(本当は乳酸もカルボン酸ではないのですが…)でも、様々な臭いを放ち、あなたの体臭を形作っています。
けれど消臭という観点で見ると、このような区分けになってくるし、油でないと溶けないとか水でしか流れないとかいうことは、外的ケア、つまり体表と衣類の消臭ケアには欠かせない考え方となってきます。
もう少し先に進みたかったのですが、今回はカルボン酸しかご説明できませんでした。次回に続きます。