No.17 体臭原因物質グループその5(生臭さ)

No.17 体臭原因物質グループその5(生臭さ)

私が勝手に分類している、体臭の元となる5大グループも、残すところあと2つ。今回は窒素系化合物です。窒素を含む化合物はたくさんあります。

単体の窒素というのは、他の元素との結合性が低くて、例えば、酸化を防ぐ目的で真空パックの中に封入したりします。お菓子やその他の食べ物の酸化を防ぐために空気の代わりに純粋な窒素ガスを入れて、酸素を追い出すと、食べ物自体が酸化しなくなるので、非常に重宝なガスです。不活性ガスと呼ばれています。

昔、私が着物のクリーニングをしていた頃、長期保存のために畳んだ着物を真空パックの袋に入れて、中の空気を吸いだして代わりに窒素ガスを入れるという保管方法を行っていました。

すると、5年たっても10年たってもカビも生えなければ変色もしない。当然、シミなどが浮き上がることもなく、金箔がべとつくこともない。シミなんて、染み抜きしなくても、ずっと変わらないんですよ。

空気中の酸素って、ホントに厄介者なんだなぁ、っていつも思っていました。そうそう、体臭に対しても空気中の酸素は厄介者です。体から出た分泌物が空気中の酸素によって酸化物に代わり、ニオイの無い物質が酷いニオイに変わる、なんてことも当たり前に起こります。

話が横道に逸れてしまいました。それでは体臭に関わる窒素系物質のお話を始めます。

アミン類がニオイの元

体臭検査をしていると様々なアミン類を検出します。体臭として窒素系化合物を俎上に乗せるときに一番考慮しなければならないのはこのアミン類です。メチルアミンに始まって、トリメチルアミン、ピロリジンやピぺリジン、ピロール類にピリジン類等々。

アンモニアは、一つの窒素に3つの水素が結合した分子構造をしているのですが、アミン類は、その水素の所に様々な原子や化合物が組み合わさって出来る化合物の総称です。だから基本的にアンモニアに近いニオイや刺激感を持っています。

実はアンモニアは、あのズドーンとくる刺激感の他にニオイがあります。閾値すれすれの量の時に嗅いでみると、生臭い感じがします。また、衣類にたくさんアンモニアを含んだ汗が付着していて、それが揮発していったあとの残り香も生臭く感じます。またアミンと一言で言っても、様々な特性があり、いくつかのグループに分からています。

魚臭症の原因はトリメチルアミン

アミンで一番有名なのはトリメチルアミンですね。いわゆる魚臭症の原因ですね。他にピロール尿症といって、同じくアミン類が原因の病気もあります。これらは生臭い体臭だったり、尿のニオイだったりが特徴の、遺伝形質異常の疾病になります。

だから、限度を超えてトリメチルアミンやピロールの検出があった場合は、私の所では、専門の病院を紹介しています。

アミン発露は病気でなくても起こる

アミン類は魚介類に多く含まれます。だから魚臭症の病院に行くと、徹底した食事療法を指導されます。もちろん、その他グリシンのような薬剤投与での治療などもありますが、体の中のトリメチルアミンの総量を減らす事が一番肝心と言われています。

しかし、食べたものが体臭に影響するという現象は、生臭さだけに留まらず時間とのかかわりが密接です。

食べたものの体臭への影響は8時間目までがピーク

おおむね食後8時間目までがピークであり、そこから除去に減少していきます。24時間たてば、通常は元々の体臭に戻ります。

だから「外出する」とか「人に会う」という時間に体臭として悪臭物質が出ないようにする、という事だけで通常の社会生活に影響が出ないようになります。但し、私の経験からすると、ウンチ君とおしっこのニオイへの影響は、もう少し長い時間がかかる場合もあるようです。これはアンモニアでも同じ。

だから内分泌からの発露として「生臭さ」があると思える人には、魚介類を食べた後の24時間以内に体臭の状況が変わったかをご自身で確かめてもらっています。

生臭さに限らず、特定の体臭については、そのような食事のコントロールも必要になる、という事ですね。

雑菌もアミン類を作る

前回のブログで「アンモニアはほかの窒素系化合物の材料になる」と書きましたが、ニオイとしてのアンモニア発露が無くても、それを材料に体表やアポクリン腺内、果ては衣類上でもっと強いニオイ物質が作られることがあります。

アミン類は僅かな量でもすごく臭う

ここで大事になってくるのがニオイ物質の閾値です。アンモニアは閾値がすごく高くてたくさん無いと人に感知されませんが、アミン類は閾値が低いモノもたくさんあって少しの量でもクサイ、と言われかねません。

例えば1000個のアンモニアがあるだけならニオイは他人に届かないけれど、そのうちの1個が何らかのアミン類に変質したら途端にニオイを感知されてしまう、という事にもなりかねません。

だから、窒素系化合物を僅かでも感知したら、肌の上での雑菌関与を疑っておくことも大事です。これは硫黄系物質にも言えることですけれども。

体の中と体表は繋がっていて、それに表皮の環境も関連する。体臭とは奥深い世界です。

次回はこのシリーズの最終話、硫黄系物質の話です。

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