No.5 体臭とは何か?その4

No.5 体臭とは何か?その4

前回から、体臭の一つのファクターである「衣類に蓄積しているニオイ物質」の話をしていますが、今回のシリーズの本質とは少し遠ざかっているようにも思えます。と言うのも、やはり私は洗剤や洗濯の専門家。もちろん、体臭の専門家でもありますが、何より得意なのはお洗濯理論ですから、ついつい長話になってしまいますからね。

衣類のニオイへの対処のお話はこのシリーズの最後に書きますので、もう少し待っていてください。今回はシリーズの中のシリーズみたいな形になっているので、最低でも前回のブログを読んでから今回のブログに来てくださいね。前回のブログは以下のURLから行けます。

No.4 体臭とは何か?その3 
前回と前々回では、体臭とは「①その瞬間に体表に分泌されるものに含まれるニオイ物質②すでに肌の上に存在しているニオイ物質➂衣類に蓄積しているニオイ物質」の合計である、というお話の中から、①と②について、少しだけ詳しく書きました。 今回は...

今回は、市販洗剤で洗濯しても、なぜニオイ汚れが取れないのか?と言うお話です。

日本の家庭用洗濯洗剤市場の現実

TVのCMでは抗菌洗剤や消臭剤のCMがたくさん流れていて、なんとなく、そういうモノを使えばニオイ汚れも取れる気になっていませんか?

ここに面白い資料があります。

コンパクト洗剤隆盛の現代ですが、日本の家庭用洗濯洗剤市場は機能性を持たせた洗剤というものに活路を見出そうと躍起になり、様々な「サブタイトル」がついた洗剤が、毎シーズンのように新発売されています。

「消臭」と銘打つ洗剤は意外と少ない

上のグラフは日本の大手ライフケアメーカ―製品のうち、洗濯洗剤商品表示にサブタイトルを付けているものの売上推移(2018年4月~2019年5月)ですが、意外と「消臭」と銘打っている者の比率が少ないのが意外でしょ? 直近データ、と言っても一年も前の数値ですが、以下の通り。

1)抗菌・抗ウィルス対応    9.4%

2)(固有名詞のついた)洗浄  8.4%

3)無添加・自然派       3.5%

4)部屋干し用         0.6%

5)消臭            0.5%

消臭とサブタイトルのついた洗剤は僅か0.5%しかありません。実際、「消臭」と銘打ってなくても「抗菌」とか「部屋干し用」としているものも、「消臭」を兼ねて売っているという側面もあり、テレビCMでは一緒くたにして宣伝していますが…実のところ「抗菌」も「部屋干し」も、衣類に付着している「菌」に対応しているだけです。つまり「抗菌剤」を配合しているだけ。

菌がクサイわけじゃない

衣類にしても、その他の環境下に於いても、「菌」がクサイわけではありません。確かに菌が排出するニオイ成分というモノもありますが、だからと言ってニオイの元は「細菌由来」が全てというわけじゃない。

菌を滅してもニオイ物質は無くなりません。そして前回のブログで書いた通り、衣類に付着しているニオイ物質は身体からの分泌物です。またその分泌物が無ければ雑菌が存在してもニオイ物質も、そうそう作られるモノではないのです。

ニオイに悩む人の衣類には「消臭」が必要

消臭と言う現象は、ニオイ物質そのものを除去したり、変質させてニオイの無い物質に変えることで効果が表れます。例え、その環境下、例えば一日着用した衣類に対して抗菌・除菌したとしても、ニオイ物質がその場に残っていれば、クサイ状態は相変わらずクサイままです。

だから、体臭を気にしている人、ニオイに悩んでいる人の衣類は「抗菌・除菌」だけでなく「消臭」と言う現象が必要なわけです。むしろ「消臭」という現象の方がずっと重要と言えるかもしれません。

消臭と言う現象は上記の通り、ニオイ物質そのものを除去するか、ニオイの無い物質に変質させるかを実現しなければなりません。

30ℓのお水に10ccの洗剤…溶液濃度は0.03%

例えば一人分の洗濯物を30ℓのお水(洗濯機の設定の中では少ない水量です)に10ccのコンパクト洗剤を投入したとすると、お水の中の洗剤の濃度は30000分の10ですから、0.03%になります。コンパクト洗剤のうち、界面活性剤の濃度が一番濃い物でも大体60%程度。つまり、洗濯水の中に0.018%の界面活性剤しか入っていないことになります。その0.018%がニオイ成分のある場所を見つけ出して、ソコの界面を壊してくれるか、というと、難しいのではないかと思えます。

消臭成分の配合は技術的に難しい

もう一つ。これは専門的な話なのですが、洗剤に配合しようとする消臭アプローチ物質というのはイオン交換と言う方法を取るしかありません。これについてはいずれ詳しく説明しますが、簡単に言えば「酸性のpH特性があるニオイ物質にはアルカリ性アプローチ物質で無臭化する。アルカリ性のpH特性があるニオイ物質には酸性アプローチ物質で無臭化する」と言う方式なのですが、この逆方向のpH特性を持つアプローチ物質を一つの液体に混ぜ込もうとすると、「失活」と言って全く効果のない中性物質に変質してしまう場合が多いのです。

当社の洗剤は特殊な技法を使って一つの液体の中に両方向のアプローチ剤を混ぜ込んでますが…そんな洗剤は、当社製品の他に世の中に一つもありません。

なぜ両方向のアプローチ剤が必要なのか? だって体臭にしてもその他の混合臭にしても、普通は酸性臭とアルカリ性臭の混合臭ですからね。洗濯物のように様々なニオイ物質が付着しているものに対して使うのなら、両pHへのアプローチ剤が必要となるからです。

体臭に悩んでいる人の多くは「衣類のニオイ」について甘く考えています。確かに衣類の蓄積臭というモノは体臭の副次的産物ではあるけれども、これが体臭をヒドクしている、ということを見逃してはいけません。

続きます。

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